堀川の畑藤発田(藤原懇)が重い病に罹ったときのこと、殿が建てた極楽寺の僧は祈薦の命は受けていなかったが、報恩のために御殿を訪れ、中門の所で『仁王経』を唱えることにした。
すると、僧が読経を始めて四時間ほどたった頃《御殿の中で殿が身を起こし、「極楽寺の僧をここへ呼べ」と言った。
多くの招かれた高僧を差し置いて、どうしてそのような僧を身辺に呼ぶのか、周囲の者が不審に思っていると、殿は次のように言った。
「病で寝ている間、恐ろしい鬼たちに打ちさいなまれていました。ところがそこへ、角髪を結った童子が中門のほうからやって来て、小枝で鬼を打ちのめして追い払ってしまった。
私がその童子に『お前は何者か、どうして鬼を追い払ってくれたのだ』と訊くと、童子は『極楽寺の某という僧が殿のお患いを嘆いて、中門の所で仁王経を読んだのです。それで某の護法童子である私が、病の元である悪鬼を追い払ったのです』と言った。それを聞いたとたんに夢から覚め、とてもよい気分になっていたのだ。それでお礼を言おうと思って極楽寺の僧を呼んだのだ」
このほか修験道の憑きもの落としの修法には、弓や刀で悪霊を脅して退散させる墓目法や、呪力によって悪霊を切ったり鞭打ったりする九字法や摩利支天鞭法、悪霊を樽や板竹筒などに封印する樽封じ・板封じ・筒封じなどがあります。
こうしてみてくると修験道は、古代末から中世の憑依呪術をよく保存しているということがわかると思います。
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